【性教育の基本】HIVとエイズとは?いまの治療とPrEP

心配な性行為があったあと、ふとした瞬間に「もしHIVだったら」と考えてしまう。検索すると昔のこわいイメージの話が出てきて、ますます不安になる。かといって検査に行く勇気も出ない。そうやって、何か月も1人で悩み続けてしまう人がいます。
HIVをめぐる状況は、この数十年で大きく変わりました。治療の進歩で、HIVは「治療を続けながら長く暮らせる病気」になっています。このページでは、HIVとエイズの違い、うつる場面とうつらない場面、検査、いまの治療、そして予防の新しい選択肢であるPrEPについてまとめました。
HIVとエイズは違う
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| HIV | ヒト免疫不全ウイルス。からだを守る免疫の細胞に感染するウイルス |
| HIV感染症 | HIVに感染している状態 |
| エイズ | HIVに感染して免疫の力が落ち、特定の病気(指標疾患)を発症した状態 |
厚生労働省の解説では、HIVに感染して免疫の低下が進み、ニューモシスチス肺炎などの決められた病気を発症した場合に、エイズと診断されるとされています。HIVに感染していても、治療で免疫が保たれていれば、エイズを発症しないで過ごせます。
日本の状況
厚生労働省によると、2024年の新しいHIV感染者・エイズ患者の報告は994件で、2年続けて増えました。そのうち約3割は、エイズを発症して初めて感染に気づいた人だとされています。
検査を受けないまま、エイズを発症してから分かる。その時点では、すでに免疫がかなり落ちていることになります。この「いきなりエイズ」と呼ばれる状態を減らすことが、大きな課題になっています。
うつる経路、うつらない場面
厚生労働省の解説では、HIVのうつる経路は大きく3つとされています。
| うつる経路 | 内容 |
|---|---|
| 性的な接触 | いちばん多い。膣・肛門・口を使う性行為で、精液・膣分泌液・血液などが粘膜にふれる |
| 血液を介して | 注射器の使い回しなど |
| 母子感染 | 妊娠・出産・授乳で、母親から赤ちゃんへ |
一方で、日常生活ではうつりません。厚生労働省の解説でも、握手、お風呂、缶などの回し飲みなど、ふつうの暮らしの中でうつることはないとされています。
| うつらない場面の例 | |
|---|---|
| 握手、ハグ | 皮膚がふれるだけではうつらない |
| お風呂、プール、トイレ | 共有してもうつらない |
| 食器や飲み物の回し飲み | うつらない |
| 蚊に刺される | うつらないと考えられている |
検査を受ける
HIVに感染しているかどうかは、検査を受けないと分かりません。感染したばかりのころに、熱、のどの痛み、筋肉痛など、インフルエンザのような症状が出ることがありますが、出ない人もいて、出てもしばらくすると消えてしまいます。
| 検査を受けられる場所 | 特徴 |
|---|---|
| 保健所・自治体の検査所 | 名前や住所を言わずに、無料で受けられる |
| 医療機関 | 症状があるとき、ほかの性感染症と一緒に調べたいとき |
厚生労働省の「HIV検査・相談マップ」で、近くの検査場所や日時を探せます。その日のうちに結果が分かる「即日検査」をしている検査所もあります。
検査には、感染の機会からある程度の期間をあけないと、正しく判定できない時期があります。どのくらいあければいいかは、検査の方法によって違うので、受ける検査所のページや窓口で確かめてください。
いまの治療
厚生労働省の解説では、複数の抗HIV薬を飲む治療で、からだの中でHIVが増えるのを抑え、免疫の低下を防げるとされています。1日1錠で済む薬も登場していて、早く治療を始めれば、感染していない人と同じように長く、健康に社会生活を送れるようになったとされています。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 治療の中身 | 抗HIV薬を毎日飲み続ける |
| 目的 | ウイルスの増殖を抑え、免疫を保つ |
| 早く見つける意味 | 免疫が落ちる前に治療を始められる |
HIVは、いまの薬でからだからウイルスを完全になくすことはできません。だからこそ、飲み忘れを減らしながら、治療を続けることが大切です。
U=U:治療でウイルスが抑えられていれば、うつらない
U=Uは、英語の Undetectable = Untransmittable の略で、「検出限界値未満=感染しない」という意味です。
厚生労働省の解説では、HIVの治療を受けて、血液中のウイルスの量が検査で検出できないほどに、少なくとも6か月以上続けて抑えられているHIV陽性者からは、性行為でHIVがうつることはないとされています。
これは、HIVと一緒に生きる人にとっても、そのパートナーにとっても、大きな意味のあることです。治療を続けることが、自分の健康を守り、同時に大切な人を守ることにもつながります。
PrEP:予防のために薬を飲むという選び方
PrEP(プレップ)は、HIVに感染していない人が、感染を防ぐために前もって抗HIV薬を飲む方法です。日本エイズ学会のサイトに掲載されている手引きでは、2024年8月28日に、ツルバダという薬が、毎日飲む形のPrEPとして日本で承認されたと紹介されています。
| 項目 | 手引きで紹介されている内容 |
|---|---|
| 飲み方 | 毎日1錠を同じ時間に飲む「デイリーPrEP」。性行為の前後に決まった飲み方をする方法もある |
| 始める前 | HIV検査、B型肝炎の検査、腎臓の働きの検査 |
| 始めたあと | 1か月後、その後は3か月ごとに受診して検査を続ける |
| 一緒に受けたい検査 | ほかの性感染症の検査 |
PrEPが防ぐのはHIVだけです。梅毒やクラミジアなど、ほかの性感染症は防げません。コンドームと組み合わせることや、定期的に性感染症の検査を受けることが大切です。
PrEPを考えるなら、PrEPを扱っている医療機関で相談してください。費用や受診の流れは医療機関によって違います。個人輸入で薬を手に入れて自己判断で飲むのは、HIVに感染していないかの確認や、腎臓などの検査ができないので避けてください。
予防の方法
| 予防の方法 | ポイント |
|---|---|
| コンドームを最初から使う | HIVもほかの性感染症も、リスクを下げられる |
| PrEP | 医師のもとで、HIVの予防のために薬を飲む |
| パートナーが治療を受けている | U=Uで、性行為でうつらない状態を保てる |
| 定期的な検査 | 自分の状態を知っておく |
パートナーがHIV陽性と分かったら
パートナーから「HIV陽性」と打ち明けられたら、驚きや不安を感じるのは自然なことです。でも、打ち明けるのには大きな勇気がいったはずです。まずは、話してくれたことを受け止めてください。
治療を続けていてウイルスが抑えられているなら、U=Uのとおり、性行為でうつることはありません。不安なことは、相手を責める形ではなく、一緒に医療機関で話を聞くなど、正しい情報を2人で確かめる形で解消していってください。
よくある疑問
1回の性行為でうつる?
可能性はあります。どの行為でどのくらいの確率か、といった数字より、心配な性行為があったなら検査を受けることを考えてください。
キスでうつる?
ふつうのキスでうつることは、まずないと考えられています。
陽性だったら、仕事や生活はどうなる?
治療を続けながら、働き、恋愛をし、暮らしている人はたくさんいます。陽性と分かったときは、医療機関や保健所が、治療や生活の相談先を案内してくれます。
最後に
HIVは、早く見つけて治療を続ければ、長く健康に過ごせる病気になりました。治療でウイルスが抑えられていれば、性行為でうつらないことも分かっています。日常生活ではうつりません。こわいのは、知らないまま過ごすこと。心配な性行為があったら、保健所で無料・匿名の検査を受けてください。
- 厚生労働省「HIVとエイズ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/aids/index.html
- 厚生労働省 HIV検査・相談マップ https://www.mhlw.go.jp/hivkensa/
- PrEP導入委員会「日本におけるHIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)利用の手引き 第2版」(2025年9月1日、日本エイズ学会サイト) https://jaids.jp/pdf/HIV-PrEP_tebiki2.pdf